狩猟を行う際に捕獲していいのは狩猟鳥獣だけとなっています。
狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲した場合は鳥獣保護管理法違反となってしまいます。
そのようなことが起きないようにどんな鳥獣が狩猟鳥獣に指定されているのか確認しておきましょう。
ここでは、県庁職員として狩猟を担当していた筆者が狩猟鳥獣について解説いたしますので、狩猟を行う方はぜひご覧ください。
狩猟鳥獣に指定されている鳥獣はこれまでもいろいろな変遷を辿ってきており、その顔ぶれは時代によって変わってきています。
現在では数年に一度の頻度で、鳥獣の生息状況等を勘案し、環境省にて見直しが行われています。
令和4年9月15日付けで見直しがされていますので、要確認です。
ゴイサギ、バンが狩猟鳥獣ではなくなりました。
令和4年度の猟期からはゴイサギ、バンは捕獲できなくなりましたのでお気をつけください。
鳥獣保護管理法では狩猟鳥獣を以下のように定義しています。
この法律において「狩猟鳥獣」とは、希少鳥獣以外の鳥獣であって、その肉又は毛皮を利用する目的、管理をする目的その他の目的で捕獲等(捕獲又は殺傷をいう。以下同じ。)の対象となる鳥獣(鳥類のひなを除く。)であって、その捕獲等がその生息の状況に著しく影響を及ぼすおそれのないものとして環境省令で定めるものをいう。
注目すべきは「鳥類のひなを除く」となっているところです。
ですので、鳥類のひなは狩猟鳥獣に含まれず、狩猟において捕獲はできません。
では鳥類の卵の扱いはどうなっているでしょうか。
鳥獣保護管理法第3章第1節の標題は「鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等の規制」となっており、鳥獣と鳥類の卵を別個のものとして並記しており、鳥獣には含まれないと法律上は扱っているようです。鳥獣ではないので当然狩猟鳥獣でもありません。
また、鳥獣保護管理法第2条第8項において、『この法律において「狩猟」とは、法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をすることをいう。』と定義されており、「鳥類の卵の採取等」をすることが含まれていません。
ですので、鳥類の卵も狩猟鳥獣に含まれず、狩猟において採取等はできません。
狩猟鳥獣に含まれないので、狩猟で捕獲・採取等ができません。
狩猟鳥獣は鳥獣保護管理法施行規則別表第二に定められています。
科名 | 和名 | 学名 | 備考 | 画像検索 | Wikipedia |
---|---|---|---|---|---|
きじ科 | エゾライチョウ | Tetrastes bonasia | リンク | リンク | |
ヤマドリ | Syrmaticus soemmerringii | 亜種コシジロヤマドリ(Syrmaticus soemmerringii ijimae)を除く | リンク | リンク | |
キジ | Phasianus colchicus | リンク | リンク | ||
コジュケイ | Bambusicola thoracicus thoracicus | リンク | リンク | ||
かも科 | ヨシガモ | Anas falcata | リンク | リンク | |
ヒドリガモ | Anas penelope | リンク | リンク | ||
マガモ | Anas platyrhynchos | リンク | リンク | ||
カルガモ | Anas zonorhyncha | リンク | リンク | ||
ハシビロガモ | Anas clypeata | リンク | リンク | ||
オナガガモ | Anas acuta | リンク | リンク | ||
コガモ | Anas crecca | リンク | リンク | ||
ホシハジロ | Aythya ferina | リンク | リンク | ||
キンクロハジロ | Aythya fuligula | リンク | リンク | ||
スズガモ | Aythya marila | リンク | リンク | ||
クロガモ | Melanitta americana | リンク | リンク | ||
はと科 | キジバト | Streptopelia orientalis | リンク | リンク | |
う科 | カワウ | Phalacrocorax carbo | リンク | リンク | |
しぎ科 | ヤマシギ | Scolopax rusticola | リンク | リンク | |
タシギ | Gallinago gallinago | リンク | リンク | ||
からす科 | ミヤマガラス | Corvus frugilegus | リンク | リンク | |
ハシボソガラス | Corvus corone | リンク | リンク | ||
ハシブトガラス | Corvus macrorhynchos | リンク | リンク | ||
ひよどり科 | ヒヨドリ | Hypsipetes amaurotis | リンク | リンク | |
むくどり科 | ムクドリ | Spodiopsar cineraceus | リンク | リンク | |
すずめ科 | ニュウナイスズメ | Passer rutilans | リンク | リンク | |
スズメ | Passer montanus | リンク | リンク |
科名 | 和名その他の名称 | 学名 | 備考 | 画像検索 | Wikipedia |
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いぬ科 | タヌキ | Nyctereutes procyonoides | リンク | リンク | |
キツネ | Vulpes vulpes | リンク | リンク | ||
ノイヌ | Canis familiaris | ||||
ねこ科 | ノネコ | Felis catus | |||
いたち科 | テン | Martes melampus | 亜種ツシマテン(Martes melampus tsuensis)を除く | リンク | リンク |
イタチ | Mustela itatsi | オスに限る | リンク | リンク | |
シベリアイタチ | Mustela sibirica | 長崎県対馬市の個体群以外の個体群 | リンク | リンク | |
ミンク | Neovison vison | 特定外来生物 | リンク | リンク | |
アナグマ | Meles anakuma | リンク | リンク | ||
あらいぐま科 | アライグマ | Procyon lotor | 特定外来生物 | リンク | リンク |
くま科 | ヒグマ | Ursus arctos | リンク | リンク | |
ツキノワグマ | Ursus thibetanus | リンク | リンク | ||
じゃこうねこ科 | ハクビシン | Paguma larvata | リンク | リンク | |
いのしし科 | イノシシ | Sus scrofa | リンク | リンク | |
しか科 | ニホンジカ | Cervus nippon | リンク | リンク | |
りす科 | タイワンリス | Callosciurus erythraeus | 特定外来生物 | リンク | リンク |
シマリス | Tamias sibiricus | リンク | リンク | ||
ヌートリア科 | ヌートリア | Myocastor coypus | 特定外来生物 | リンク | リンク |
うさぎ科 | ユキウサギ | Lepus timidus | リンク | リンク | |
ノウサギ | Lepus brachyurus | リンク | リンク |
上記の一覧表の備考欄で「オスに限る」と記載があるのは「イタチ」のみです。
ですが、ヤマドリやキジのメスは捕獲してはいけないと聞いたことがありませんか?
狩猟鳥獣は狩猟をしても良い鳥獣として定められているのですが、生息状況等を勘案して狩猟鳥獣の保護のため、環境大臣や都道府県知事が捕獲の禁止や捕獲数の制限をすることができるとされています。
(対象狩猟鳥獣の捕獲等の禁止又は制限)
第十二条 環境大臣は、国際的又は全国的に特に保護を図る必要があると認める対象狩猟鳥獣がある場合には、次に掲げる禁止又は制限をすることができる。
一 区域又は期間を定めて当該対象狩猟鳥獣の捕獲等を禁止すること。
二 区域又は期間を定めて当該対象狩猟鳥獣の捕獲等の数を制限すること。
三 当該対象狩猟鳥獣の保護に支障を及ぼすものとして禁止すべき猟法を定めてこれにより捕獲等をすることを禁止すること。
2 都道府県知事は、当該都道府県の区域内において特に保護を図る必要があると認める対象狩猟鳥獣がある場合には、前項の禁止又は制限に加え、同項各号に掲げる禁止又は制限をすることができる。
ですので、先程挙げたヤマドリやキジのメスは鳥獣保護管理法第12条によって狩猟鳥獣なのに捕獲禁止になっているのです。
狩猟免許試験においてヤマドリやキジのメスが狩猟鳥獣であるかを問われたときに引っかからないように気をつけてください。
では、環境大臣指定の狩猟鳥獣の捕獲等の禁止又は制限を見てみましょう。
都道府県によっては当該都道府県の区域内において狩猟鳥獣の捕獲等の禁止又は制限をしている場合がありますので、狩猟をする都道府県にご確認ください。
鳥獣保護管理法施行規則第10条第1項に定められています。
対象狩猟鳥獣 | 捕獲等を禁止する区域 | 捕獲等を禁止する期間 |
---|---|---|
ヤマドリ(亜種コシジロヤマドリを除く。)の雌
キジ(亜種コウライキジを除く。)の雌 |
全国の区域 |
令和4年9月15日から |
ヒヨドリ | 東京都小笠原村、鹿児島県奄美市及び大島郡並びに沖縄県の区域 |
令和4年9月15日から |
ツキノワグマ | 三重県、奈良県、和歌山県、島根県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県の区域 |
令和4年9月15日から |
シマリス | 北海道の区域 |
令和4年9月15日から |
鳥獣保護管理法施行規則第10条第2項に定められています。
捕獲等の数の1日当たりの上限は、以下の表のとおりです。猟区の区域にこの制限は適用されませんが、猟区ごとに捕獲数の制限を設けている場合がありますので、各猟区にご確認ください。
対象狩猟鳥獣 | 捕獲等の数の1日当たりの上限羽数 |
---|---|
エゾライチョウ | 2羽 |
ヤマドリ |
合計して2羽 |
コジュケイ | 5羽 |
ヨシガモ |
合計して5羽 |
キジバト | 10羽 |
ヤマシギ |
合計して5羽 |
一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。
未遂も同様の懲役又は罰金に処されます。
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第1号
第8条の規定に違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をした者(許可不要者を除く。)
前項第1号から第2号の2まで、第4号(第35条第2項、第36条又は第38条に係る部分に限る。)及び第5号の未遂罪は、罰する。
六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処されます。
未遂も同様の懲役又は罰金に処されます。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第4号
第12条第1項若しくは第2項の規定による禁止若しくは制限(第14条第3項の規定によりその一部が解除されたものを含む。)又は第12条第3項の規定による制限に違反した者
前項第4号及び第5号(第15条第4項又は第35条第3項に係る部分に限る。)の未遂罪は、罰する。
・狩猟鳥獣の見直しが行われ、令和4年度の猟期からはゴイサギ、バンは捕獲できなくなった。
・鳥類のひな及び卵は狩猟鳥獣に含まれないので、狩猟で捕獲・採取等はできない。
・現在、狩猟鳥獣は46種(鳥類26種、哺乳類20種)が指定されている。
・狩猟鳥獣であっても捕獲の禁止や捕獲数の制限がされていることがある。
・狩猟鳥獣以外の鳥獣を捕獲した場合や狩猟鳥獣の捕獲禁止に違反した場合などは罰則がある。
なるべく分かりやすい説明を心がけましたが、参考になったでしょうか。
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